愛着について
愛着(アタッチメント)とは、子どもが特定の他者に対して示す情緒的な結びつきや繋がりのことを指すと考えられていますが、アタッチ(Attach)とは「くっつく」、「付着させる」という意味があり、人が、不安、恐怖、悲しみなどの不快な状況に置かれた際に、文字通り、他者にくっつくことを通して安心感・安全感を回復・維持しようとする、心理・行動的な傾向のことを指しています。
人間の赤ちゃんは、非常に未発達な状態で産まれてきますので、他者の保護なしには生きていくことのできない、とてもか弱い存在です。そのため、自分のことを護り育ててくれる他者との関係性がとても大切になります。お腹が空いた、オムツが汚れて気持ち悪いなど、身体的なニーズを満たしてもらいたい時や、ひとりぼっちで寂しい、真っ暗なお部屋で怖いなど、危険を感じている時などに、大声で泣いて助けを求めたり、保護者のところに駆け寄っていって保護を求めたり、というアタッチメント行動をとります。その際に、きちんとニーズを満たしてもらい、不快な状態から安心感・安全感を回復させてもらうという体験を積み重ねていくことができれば、その関係性が子どもにとっての「安全基地」となっていきます。何かあってもいつでもそこに帰って安心をもらえる「安全な避難場所」を獲得することによって、子どもは安心して外の世界へとチャレンジしていくことができるようになるわけです。
人生最早期におけるこのような保護者との体験の積み重ねを通じて、子どもの中に養育者や自分自身に対するイメージが作られていくと考えられてします。例えば、愛され、大切にされ、受け容れられ、危険から護られてきた子どもは、自分は愛らしく、価値のある存在であり、また、養育者は、信頼することができ、必要な時には必ず助けてくれる存在として認識されることになるかもしれません。逆に、いつも拒否され、無視されてきた子どもは、自分は大切ではなく、愛される価値のない存在であり、また、養育者は、自分に対して無関心で、必要な助けを与えてはくれず、サポートを求めてもいつも拒絶するであろう存在としてイメージされるかもしれません。頻繁に傷つけられ、過度に罰せられてきた子どもは、自分は無力で、無価値で、悪い人間であり、養育者は、気まぐれで、危険な存在であると認識されるかもしれません。
保護者との関係の中で幼少期に築かれたこのような自己や養育者に対するイメージや関係性のパターンが、その後の人生における対人関係上のひな型となると考えられています。つまり、保護者以外の他者との人間関係においても、これらのイメージや愛着のパターンが無意識の内に持ち込まれることになるということです。
いくつかの例として、次のようなパターンとして表われてくることがあります。
例1
困っていても人を頼ったり助けを求めたりすることが難しく、誰の助けも必要としていないかのように振る舞い、人を寄せ付けない
パートナーに対しても「あなたを必要としていない」と言っているかのような態度を取ってしまう
感情を表に表すことが苦手で、特に感情的な問題を人に話すことに対して強い抵抗を感じ、物事をじっくり考える方がずっと楽に感じる
誰かと一緒にいるよりも、一人でいることや、動物・自然・物との関りの方を好む
人との関りよりも仕事や趣味などの活動を重視しがちで、人と親密な関係を築くことを避けようとしがち
例2
自分から人が離れていったり見捨てられたりするのではないかという不安が強く、関係をつなぎ止めるために、相手を喜ばせようと頑張りすぎたり、人に合わせすぎたり、嫌なことでも「嫌」と言えなかったり、自分に責任のないことでも相手に謝ったりしてしまう
誰かと会話をした後、一人になった時などに、自分の発言で相手を傷つけてしまったのではないか、不快にさせてしまったのではないか、誤解されてしまったのではないかと不安になり、後悔しがち
相手の気持ちや反応の方に注意が向きすぎるため、自分の気持ちは二の次になりがち
一人でいることが苦手で、パートナーの近くにいたいと強く感じると同時に、パートナーとの関係を失ってしまうのではないかと恐れたり、不安に襲われたりする
パートナーの近くにいたいが、同時にパートナーに対して怒りも感じる。不安を感じながらパートナーを待っていたのに、結局はケンカを始めてしまう
人とのつながりを非常に強く求め、親しくはなるが、心から安心のできる関係を得にくく、「いくら求めても本当に欲しいものは得られない」という失望体験が続いてしまう
不快な感情を自分でなだめることが難しいため、アルコール、食べ物、買い物、自傷行為、性行為、ギャンブル、ゲーム、薬物など、自分以外の誰か・何かに依存しやすい
例3
人との親密さを望んでおり、近くにいたいが、同時に恐れてもいる
パートナーと親密になってくると、説明のつかない恐怖を覚えることがある
何か問題が起きたり、ストレスを感じたりした時には、すぐに混乱し、うろたえ、途方に暮れてしまう。
人がふいに近づいてきた時、自分でも大げさだと思えるくらいに、非常にびっくりしてしまう
自分がパートナーのことをコントロールしていると言って、パートナーに不満を漏らされることが多い
人との関係の中で、最悪の事態を想定・予想していることがよくある
パートナーと一緒にいても安全だと感じることは難しく、誰かに守ってもらえるような体験は自分の手の届かないところにあるように感じられる
これらは、様々な対人関係の中に表われてきますが、自分の力だけでは生き延びることができない未熟な幼子であった頃に、自分の置かれていた環境にうまく適応して生き延びていくために、一生懸命に身に着けてきたパターンであると考えられています。そのため、必ずしも悪いものというわけではなく、少なくとも、幼い頃に育った環境の中では、これらのやり方が役に立ち、助けとなってくれていたはずです。ですが、環境が変わり、より快適な生き方をしてもよい状況に置かれても、このパターンから抜け出すことができなくなり、心地よい人間関係を作ることができず、生きづらさを感じたり、満たされない思いを繰り返す中で苦しんだり、ということが起きてしまうことが少なくありません。
例えば、学校や職場が変わっても、似たようなタイプの人と関わり合いができ、以前に苦しんでいたものと同じような体験が、その新しい人間関係の中でも繰り返されてしまう。あるいは、恋愛関係の中でも、幸せを願っているはずなのに、パートナーとの間でなぜか同じようなパターンが繰り返され、辛い思いをして終わるということが続いている、などです。
このような場合には、本来は適応のために身に着けてきたはずのこれらのパターンが、皮肉なことに、その後の人生の中でより良い人間関係を築き、継続していく上での妨げとなってしまっているというわけです。
愛着トラウマからの回復
これらは例の一部でしかなく、育った環境によって他にも様々なパターンが存在しています。
カウンセリングルーム育てあいでは、愛着トラウマに有効な様々な心理療法を用いて、クライエントの方々がこれらのパターンから抜け出し、より良い人間関係を築いていくことができるよう、その発端となっている愛着の傷を癒しながら、他者との関係において、また自分自身との関係においても、より望ましく新しいパターンを身に着けていけるようサポートしていきます。
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